
大人の発達障害の原因と特徴
発達障害は、その字面から「親の育て方に問題があったのか」と思われがちですが、発達障害は脳機能の偏りが原因だと言われています。
発達障害は、家庭環境や親の育て方、本人の性格などによるものではないのです。
発達障害は知的に障害があるわけではなく、能力が劣っているわけでもありません。
発達障害は大きく分けて2つの症状があります。
その症状ごとに特徴や多く見られる症状をご説明します。
注意欠陥多動障害
●集中力や注意力が続かない
- ひとつのことをしているときにほかのことが気になると、そちらの作業を始めてしまい、結果的にはすべてが中途半端になる。
- 人の話を集中して聞くことができない。
- 物音や話し声が気になると気が散り、集中して作業を続けることができない。
●衝動的に行動する
- 衝動買いをする。
- あまり深く考えずに発言したり行動したりして、他人を傷つける。
- 周りに相談せず、自分の独断や思い込みで大事なことを決める。
●不注意によるミスが多い。物事の段取りを考えることが苦手
- 仕事や課題、大事な約束などを忘れる。
- 仕事や課題をするために必要なものを失くす。
- 部屋の片付けや物の整理が苦手。
- 仕事や家事を段取りよく進めることができない。
- お金の管理が苦手。
- 待ち合わせや仕事に遅刻する。
自閉スペクトラム障害
●コミュニケーションが苦手
- 人との距離の取り方がわからない。人の気持ちや表情を読み取ることができない。
- 皮肉が通じない。たとえ話が伝わらない。
- 雑談に対してどう返答していいかわからない。
- 数人で話をしていると話についていけなくなる。
●環境の変化に弱い。物事やルールへのこだわりが強い
- 予測していなかったことに対応できない。
- 新しい環境や人間関係に慣れるのに時間がかかる。
- 特定の物に対するこだわりが強い。
- 自分なりの手順を変えたくない。手順を変えることを強制されたり作業を途中で妨げられたりすることを嫌がる。
- ルールや秩序にとらわれる傾向にあり、臨機応変な対応が苦手。
- 物事をあいまいにすることを嫌い、イレギュラーな対応を求められると対応できない。
など、発達障害を持っている人は言動や作業の仕方に特徴があります。
参考:
医療法人 和楽会「大人の発達障害とは?」
ひだまりこころクリニック「大人の発達障害(アスペルガー症候群)とは?」
ドクターズ・ファイル「発達障害の原因、症状、治療法とは 大人も子どもも、まず相談を」
大人になって発達障害に気づくのはなぜ?

発達障害は育ち方や性格などではなく、生まれつきのものです。なので、成長とともに発達障害になるわけではありません。それなのに大人になってから発達障害だと診断されるケースはとても多いものです。
それはなぜかというと、大人になってからのほうが本人や周りが発達障害に気づきやすくなるからです。
学生時代なら、発達障害のためにコミュニケーションの取り方が独特だとしても、周りは「天然」や「不思議ちゃん」など、キャラとして受け止めることが多いものです。
しかし、歳を重ねてさまざまな人と仕事をしたり交流をしたりすると、発達障害を持つ人のコミュニケーションの取り方に対して違和感をおぼえるようになります。
発達障害を持っている人のなかには、コミュニケーションに関して自分なりに対処法を見つけて実践している人もいます。
たとえば、「誰かにこう言われたら必ずこう答える」「誰かが笑ったら意味がわからなくても一緒に笑う」「怒られているときは絶対に口答えをしない」などです。
ただ、これは相手の真意を汲み取って受け答えをしているわけではないので、毎回同じ受け答えをしていると周りは違和感をおぼえるでしょう。
また、学生時代は決められたことを決められたとおりにすることが多かったですが、社会に出ると仕事によってはイレギュラーな対応を求められることがあります。
発達障害を持っていると臨機応変に動くことを苦手だと感じる人もいます。
最初は周りも本人も「最初だから仕方ない」「そのうちできるようになる」と思いますが、いつまで経っても苦手なままだと、やはり違和感をおぼえるでしょう。
このように、社会に出て本音と建て前を使い分けたり、お世辞や社交辞令を使いながら会話をするようになる頃にコミュニケーションの独特さが見えやすくなります。
また、仕事の仕方や対応の仕方などにも発達障害の特徴が見られることがあります。
発達障害は、大人になってから発症するのではなく、大人になって浮き彫りになるのです。
大人の発達障害に対して、周りはどう対応する?
大人の発達障害は、それ自体に大きな問題があるわけではありません。
ただ、発達障害を持っていると、仕事や人とのコミュニケーションに関して困難を抱えることがよくあります。
そのため、失敗や人とかかわることを恐れて外出を避けたり、仕事のミスを怒られ続けているうちに自信を無くして「自分はダメな人間なんだ」と思い込むこともあります。
大人の発達障害で気をつけたいのは、自分を追いつめて心身に支障をきたすことなのです。
発達障害を持っていても、本人の適性に合った仕事に就くと才能や能力を発揮することがあります。
周りのサポートによって、仕事を進めやすくもなります。
そこで、本人も周りも困らないように、大人の発達障害にはどう向き合ったら良いかお話ししたいと思います。
仕事の指示はわかりやすく

発達障害を持っている人は、見通しが立たない事柄が苦手です。
何か仕事を頼むときは、仕事の手順を伝えるとともに「これは○時までに仕上げて」「この仕事が終わったら次の仕事に取りかかって」など、具体的な段取りも伝えましょう。
わかりやすく指示をすることによって、迷うことなくひとつずつ作業を仕上げることができます。
あいまいな表現を避ける
発達障害がある相手には、あいまいな表現や皮肉をこめた言い方は避けることも大切です。
あいまいな表現では指示が的確に伝わりませんし、皮肉を皮肉と受け取ることもないからです。
仕事の指示やミスに対する注意など、正しく理解してもらいたいことがある場合は、濁したりせずにストレートに言いましょう。
察してもらおうとしない
発達障害がある場合、人の気持ちを察したり言葉の行間を読んだりすることが苦手です。
たとえば、体調が悪い妻が「ご飯が作れないから、あなたの分のごはんを外で買ってきて」と言ったとします。
その夫に発達障害がある場合、妻に何か食べたいものはあるかどうか聞くことなく自分の分の食事だけを買ってくることがあります。
夫に思いやりの気持ちがないわけではなく、妻の気持ちを察することができないだけなのですが、妻にしてみたらモヤモヤしたりイライラしたりするでしょう。
そんなことにならないように、発達障害を持っている人に対しては察してもらおうとしないことが大切です。
大人の発達障害は正しく知って対応することが大事!
発達障害の特徴は、決して本人の性格でもポリシーでもありません。
努力して変えられるものでもありませんし、家庭環境や育てられ方に問題があるわけでもありません。
発達障害があるからといって劣っているわけでもありませんので、適切にサポートすることで能力や才能を発揮することができます。
周りは発達障害を持っている方に対して思い込みや偏見の目で見ることなく、正しく理解しながら仕事や日常生活を一緒に送るようにしましょう。