
体における自律神経の役割とは?
自律神経は胃、腸の働き、血管、体温の調節などの働きをコントロールし、人間の生命維持に大きな役割を果たしています。運動神経をつかさどっている体性神経は自分の意志で動かすことができるのですが、自律神経は自分の意志で動かすことはできません。反射的、自動的に動くのです。そのため、意識しなくとも呼吸をし、胃は食べたものを消化し、汗をかいて体温を調節しているのです。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つから成り、この2つがバランスを取りながら働くことにより体は調子よく動くのです。交感神経と副交感神経の働きをそれぞれ詳しくみていきましょう。
目覚めているときに働く『交感神経』
交感神経は昼間活動しているときに主に働きます。具体的に交感神経は、脳の血管を収縮させ、瞳孔を開き、心拍数を増やし、膀胱は弛緩し、汗腺は汗を出すようにはたらきかけます。そう、体を活動に備えさせるのです。
朝目覚めて準備するとき、仕事・勉強しているとき、家事をしている時、スポーツをしているときには、交感神経が働いています。また、ストレスを感じているとき、緊張しているときにも交感神経が活発になります。試験の時、先生や上司に怒られているとき、プレゼンの前など、人は緊張しますよね。このような時には交感神経も高まっているといっていいでしょう。
眠っているときに働く『副交感神経』
副交感神経は、体がリラックスしているとき、眠っているときに働きます。脳の血管を拡張させ、瞳孔を閉じ、心拍数を減らし、胃腸の動きを活発にし、膀胱は収縮します。仕事を終えて家に帰ってリラックスするとき、食事をしているとき、お風呂に入っているとき、眠っている間などは副交感神経がはたらいています。副交感神経は体をリラックスさせ、その時に体は体の修復を行うのです。
風邪をひいたときや疲れた時などゆっくり寝て、次の日にはすっきり元気なったということはありませんか?これは副交感神経のはたらきによるのです。それで睡眠時間が短いと副交感神経の働く時間が短いので、疲れが取れない、体調がすぐれない、朝起きても疲れが残っているといった、体の不調が起きてしまいます。
体におけるリンパの役割とは?
「リンパの流れをよくする」って、よく耳にしますよね。このリンパの正体はなんでしょう?
リンパ管は血液と同じように、全身に張り巡らされています。その中はリンパ液が流れていますが、これには血しょうの一部、たんぱく質やブドウ糖、塩類、そして白血球の成分である顆粒球、単球、リンパ球などが含まれています。全身の様々なところには、リンパ管が集結しているところがあるのですが、これがリンパ節と呼ばれます。
血液は心臓から送り出されると約40秒で全身を巡って、心臓へと戻っていきます。リンパ液は足先から鎖骨にある精脈角まで届くのに、なんと約8~12時間かかるのです。なぜなら血液とは違いリンパ液は、その人の筋肉の動きで流れていきます。そのため、かなりゆっくりとしたペースでリンパ液は流れているのです。
当然筋肉を使わない人、例えばデスクワークの人やあまり動かない仕事の人は筋肉を動かす機会が少なく、筋肉の運動量が足らないのでリンパの流れが滞り、足のむくみ、冷え、疲労を蓄積しやすくなってしまいます。
リンパの役割とは?

血液と同じように全身を巡っているリンパ管ですが、その働きは大きく違うのです。リンパのはたらきは大きく分けて2つあります。
- 細胞に不要となった老廃物や水分を回収して運ぶ
- ウィルスや病原菌に対する抗体を作り出す免疫機能
自力で流れていくことのできないリンパ液をスムーズに流れるようにするため、リンパに添ってマッサージをすることができます。これでリンパが滞りを防ぐことができますし、免疫力のアップにもつながるのです。
リンパが滞るとどうなるのか
リンパの流れが滞るということは、老廃物や水分が排出されにくくなるということなので、体がむくみます。体内に水分をため込んでしまうのです。また体から毒素が排出されませんので、肌荒れ、肩こりや頭痛、疲労といった症状が出てきてしまいます。免疫力も落ちますから、風邪をひきやすくなったり感染症にかかりやすくなります。そう、リンパ液の流れが滞ることは健康にも美容にもとっても良くないのです。
自律神経とリンパの関わりについて
リンパにある免疫力とは?
リンパ液の白血球にはリンパ球と顆粒球(かりゅうきゅう)という2種類の物質が含まれています。どちらも体を守る働きをしているのですが、リンパ球はウィルスやがん細胞を攻撃し、顆粒球は細菌を攻撃します。この2つがバランスよく働いて体の免疫力を上げることができるのですが、白血球中にリンパ球35%、顆粒球60%、これが病気にかかりにくい数値であるといわれています。
免疫力と自律神経のかかわりとは?
このリンパ球と顆粒球のバランスと深くかかわっているのが、自律神経。交感神経が優位になった時には顆粒球が増えて体を感染症から守り、副交感神経が優位になるとリンパ球が増えて細胞の入れ替え作業をすることがわかっています。
自律神経の切り替えがきちんとできているときは顆粒球とリンパ球のバランスが保たれているのですが、自律神経が乱れてくると、顆粒球とリンパ球のバランスも乱れてきます。多いのが、働きすぎや人間関係など様々なことが原因で引き起こされるストレス。ストレスにさらされると、交感神経が優位になってしまい体が常に緊張している状態となってしまいます。こうなると顆粒球が増えてリンパ球が減ってしまいバランスが崩れるため、体の免疫力が低下してしまうのです。このようにリンパにある免疫力と自律神経は密接にかかわっているのです。
自律神経を整えて免疫力を上げる方法
自律神経を整えると、当然リンパも正常に機能するようにになりますので、体の免疫も上がってきます。自律神経を整えるのに毎日の生活の中でできること、4つご紹介します。特別な道具など必要なく、すぐに実践できることばかりを集めてみました。
ストレスをためないようにする
ストレスは自律神経を乱す原因となっています。ストレスを受けると自律神経をコントロールしている脳の視床下部にも悪影響を与え、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまいます。それでストレス対策がとても大切なのです。
とはいってもストレスを感じているときに、自動的に体はリラックスできないでしょう。意識的にリラックスする方法を、トレーニングして身に着けるのです。リラックス法は色々とあるのですが、簡単にできるのが腹式呼吸。リラックスできる腹式呼吸のやり方をご紹介します。
腹式呼吸のやり方

- 椅子に座って肩の力を抜きます。手をお腹に当てます。
- 6秒かけてゆっくりと息を吐いていきます。
- 1秒息を止めて、3秒鼻から息を吸い込む
これを1分間以上行います。息を吸って吐くときには、お腹がふくらみへこむこと、横隔膜が上下するのを意識するようにします。
腹式呼吸を行うと体がリラックスします。また、深く呼吸することで横隔膜が上下します。横隔膜には自律神経が多く通っており、深く呼吸をして横隔膜を動かすことで自律神経も整っていくのです。
質の良い睡眠をしっかりと取る
自律神経と睡眠には、密接な関係があります。寝る前には副交感神経を高めておくと、スムーズに入眠することができるのです。しかしこの切り替えがうまくいかず交感神経が優位になっていると、体が疲れているのに眠ることができない、ということになってしまいます。
副交感神経を優位にするために、寝る前にやりたいこと、やってはいけないことをご紹介します。
●寝る前にぬるめのお湯に浸かる
熱めのお湯に浸かってしまうと、交感神経が活発になってしまいます。38℃から40℃くらいの湯船に浸かると、体がリラックスし副交感神経が活発になります。
●寝る4時間前には食事を終える
胃に食べ物が入って働いていると副交感神経が優位になるのですが、胃が消化を行っているときは、深い睡眠に入りにくくなってしまうのです。それで、遅い時間に食事をすると、質の良い眠りを妨げてしまうのです。
●寝る前にPCやスマホを見ない
PCやスマホなどブルーライトを発光しているものを寝る前に見ると、交感神経を刺激して入眠の妨げとなってしまいます。寝る前には白色のライトを落として、電球のようなオレンジ色のライトにすることで、眠りに入る準備をすることができます。
朝日を浴びてウォーキングする
乱れてしまった自律神経を整えるのに、規則正しい生活を送ることが助けになります。そのためすすめられているのが、朝のウォーキング。生活にリズムを作り出すことができますし、多くの健康効果があります。ウォーキングを30分くらい行うことで、血行が良くなりコリの原因である乳酸を取り除き、脳を活性化し、脂肪を燃焼してくれます。
また、朝日を浴びることで脳内物質セロトニンが分泌されます。セロトニンが増えると、睡眠促進ホルモンのメラトニンが分泌されやすくなります。これで夜眠りにつきやすくなり、自律神経が整っていきます。
なんでも1度にやろうとしない
やらなければならないことが沢山あると、ストレスを感じる人は多いと思います。このような状態では常に何かに追われているようで、気持ちがリラックスできませんよね。
ストレスを軽減するために、まず1日のスケジュールをしっかりと立てましょう。今日中にやらなければならないことを見極めるのです。明日でも間に合うことは、明日行うようにします。なんでも一度に行おうとせず、しっかりとスケジュール管理することでストレスを軽減して、自律神経を整えるようにしましょう。
ストレスや疲れを減らして、健康な身体を作りましょう
自律神経とリンパの関係性、そして免疫力をつけ体調を整えるためにできることをご紹介しましたが、いかがでしたか?血液のはたらきについてはよく知られていますが、血液と同じように全身に張り巡らされているリンパ管の仕組みについては、あまり知られていないかもしれませんね。
しかし、体の老廃物を運び、免疫力を保つためにとても重要な働きをしていることがわかりました。自律神経を整えて免疫力を上げて、健康な毎日を過ごしてください!